長谷川の教育論[3]

● 人間の能力を向上させるためには、ある程度の負荷が必要だ。走力を向上させるためには辛いランニングが必要だし、腕力を向上させるためには腕立て伏せが欠かせない。楽をして得られる力(パワー)など存在しない。

 昨年のNHK大河ドラマ「江」の終盤に「お福」なる女性が登場する。後の「春日の局」である。彼女は三代将軍家光の「めのと」だ。日本では古来より、高貴な方の跡取りは「めのと」と呼ばれる育ての親によって養育される。高貴な方は子育てが嫌い?…そうではない。例えば戦国時代、領地・領民を守るためには我が子や母親を人質に差し出すことは日常茶飯事だった。それどころか、若き日の家康は信長の命によって妻と長男を殺さなければならなかった。そんな時代、「親子の情」を重んじると、領地・領民を守ることができないと考えられていた。そのため、跡取りは他人によって育てさせ、親子の情を断ち切るとともに、リーダーとしての帝王学を学ばせたのだ。これが「めのと制度」である。

 現代にも「めのと制度」は生きている。企業の御曹司は大学を出ると、他企業で修業を積むのが慣例である。それをしなかったのが、大王製紙である。自分のギャンブルのため100億の金を遣い込んで実刑を受けた元会長(三代目)は、東大を卒業すると同時に大王製紙に入社している。若い頃から御曹司扱いされて年を重ねた失敗例である。

 スポーツでも芸術でも、優れたパフォーマーには優れた指導者の存在が不可欠だ。なぜなら、親子では「ある程度の負荷」を掛けられないからだ。たとえばバイオリンやギターの弦楽器。最初は指先が切れ、血を吹き出しながらも弾かなければならない。野球では血豆を潰してもバットを振ることが必要だ。そうした時、親としては子どもが苦痛に耐える姿を見ていられない。どうしても情が邪魔をする。
 勉強も同じである。学力という力を向上させるために「強いて勉めること」を強要するのは、我々プロの指導者に任せていただきたい。そして、ご両親は「お子様being(存在)」そのものを愛でていただきたい。今日もいっぱいご飯を食べ、すやすやと眠り、元気に学校へ通うことを喜んであげてほしい。そうした塾と家庭の役割分担があって、子ども達の健全な成長は図られるのだ。私は喜んで嫌われ役を演じる。

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